査読過程のガイドライン
「村研ジャーナル」査読過程のガイドライン
2025年11月28日 村研ジャーナル編集委員会
はじめに
この「ガイドライン」は、『村研ジャーナル』誌の査読の過程について、委員会としての立場や方針を説明したものです。査読を引き受けてくださったかたはご一読いただき、こちらの手引きに従って査読していただくようお願いします。また投稿者の方もこちらを参照し、査読の過程とその目的を理解したうえで投稿や修正をお願いします。
1.査読の目的と基本的な方向性について
査読の基本的なねらいは、投稿された論文について、掲載が認められる水準を念頭において、問題点の改善を促すことにあります。執筆者当人の論旨をより明確に、説得力のあるものにすることが目的です。論文の内容や結論について批判や議論をすることは、掲載後に誌上や発表の場でおこなうべきものであり、査読の目的ではないことをまずは確認しておきます。
投稿者には可能な限り完成度の高い論文を書いていただくことを期待しますが、査読者の役割は掲載の可否を判断することではなく、あくまでも、本誌に掲載するに値するレベルに達しているかどうかを判断することです。掲載可か掲載不可か、修正が必要かどうかの結論を出すことは、委員会の役割です。
また査読に際しては、投稿者・査読者・委員会は対等な関係であり、たがいの主張をくみ取り尊重することが求められます。委員会は、論文に対する結論を出すにあたり、論文とそれに対する査読結果報告に基づき判断します。投稿者及び査読者は、委員会の結論に対する異議があれば、理事会に申し出ることも可能です。
最後に、村研ジャーナルは年2回発行であり、掲載のタイミングが限定されています。委員会も迅速な手続きを行うよう努力いたしますので、査読者の方は査読結果報告について、投稿者の方は査読をうけての修正について、可能な限り期限を守っていただきますよう、ご協力をお願いします。
2.投稿者のみなさんへ
投稿にあたっては投稿規程と投稿用のフォーマットを確認し、それを遵守してください。1.で述べたように、査読の目的は投稿された内容が本誌に掲載するに値するものかどうかを判断することであり、学術論文としての水準を持ったものであることは、査読過程の目標ではなく前提です。査読者と投稿者は研究者として対等な関係ですから、論文として成立させるための、形式及び内容についての基本的な事項についての助言を、査読者や委員会に求めることはないようにしてください。
査読者からのコメントは専門的な研究者からの意見として受け取り、真摯にご対応ください。論文に対する誤解や誤読にもとづくという印象を持たれる場合もあるかもしれませんが、なぜそのような誤解や誤読が生じたのか、を考慮して論文の再検討をおねがいします。もちろん、コメントで指摘された方向性に必ず従わなければならないわけではありませんが、なぜ異なる方向性をもった記述をするのかを、査読者や委員会が十分に理解できるように論文の修正を試みてください。
修正にあわせて、査読者それぞれに対して、論文とはべつにリアクションペーパーを作成してください。形式は自由ですが、査読者からのコメントひとつひとつについて、修正した論文のどの部分においてどのように対応したのか(あるいは、なぜ対応する必要がないと考えたのか)、がわかるように、作成してください。
3.査読者のみなさんへ
1.で述べたように、投稿者と査読者そして委員会は対等な関係である「べき」です。しかし査読のシステム上、実際には投稿に対して査読者が一方的に判断する行為になりがちです。この点を十分に自覚したうえで、あくまでも投稿者を自立した研究者とみなして、査読報告をお願いします。コメントは、論文中の具体的な個所について、なぜ問題があり、どのような改善方法がありうるか、を記載することとしてください。
可能な限り、委員会むけ査読報告書にある「項目別評価」を活用して、コメントを具体的で明瞭なものにしてください。この項目ごとにコメントを整理してもよいですし、コメントごとにどの項目に対応したものなのかを記してもかまいません。一つのコメントが複数の項目に関わるものであることもあるでしょう。いずれにしても、簡潔なコメントの方が投稿者に理解されやすいであろうと考えられます。
修正すべき問題点については、1回目の査読の際にすべて指摘し、修正稿への再査読の際にあらたな問題点を追加することは、避けてください。もちろん、修正稿において修正あるいは新たに追加した内容についてあらたな問題点が生じた場合については、この限りではありません。
これまでの研究を越えるすぐれた論文を掲載することは、もちろん学会誌として目指すべき目標です。しかし、ある点では物足りないところがあっても、ほかのある点では本学会の構成員に資するところがあると判断できる場合は、積極的に評価していただきたく思います。あまりに高い完成度を求めることは、私たちの貴重な共有財産になる可能性のある議論や社会的現実が公表される機会を、奪いかねません。論文の構成や論理展開、実証のレベルなどが、本誌に掲載可能なレベルに達しているかどうかについてのご意見をお願いします。
査読にあたっては、投稿された論文に内在する、問題設定・研究方法などを尊重してください。先行研究との関連づけ・研究方法・価値観といった点で、投稿者との相違がある場合もあります。しかしそれによる異論は、査読を通してではなく、掲載後にほかの手段による批判として主張するようにしてください。査読においては、そのような立場の違いを超えて、投稿者の立場が論理的または実証的な論文構成によって主張されているかどうかについて判断をお願いします。コメントが、投稿者が設定した課題や研究方法の範囲を超えるものになっていないかどうか、についてご注意ください。
ことに本学会は、学際的な研究コミュニティです。史資料のあつかいや先行研究の整理において、査読者ご本人の専門分野とはことなるアプローチの論文を担当することもありえますが、それが学術論文として十分な説得力を持って記述され、村落研究に資するものであると判断されれば、積極的に評価するようお願いします。