会長挨拶

会長挨拶

日本村落研究学会会長 小内 純子


 2021 年 11 月から2年間、会長職を仰せつかることになりました。前回の理事の任期を終えた際、自分としては理事や役職は卒業する時期であり、あとは一会員として楽しく学ばせて頂こうと考えていただけに、突然の事態の展開にただただ狼狽するばかりでした。ただ、この年になると「人生の巡り合わせ」のようなものを感じることも多く、こんな私にもできることがあるのかもしれないと思い、力量不足を承知の上でお引き受けすることに致しました。会員や理事の皆様のご協力を切にお願いする次第です。


 1月上旬に開催された第 2 回理事会を終え、改めて現在の村研が抱える組織・運営上の問題が理解することができました。鳥越会長時代に問題提起された「村研年報」と「村研ジャーナル」の2本立て体制の刷新は、各委員の献身的な取組みによって改善・維持されてきていると思います。しかし、会員の高齢化や若手研究者の全国的な減少を考えれば、電子化の可能性も踏まえ、研究の水準を維持・発展させつつ、省力化と経費削減を追求する必要があると考えます。研究の水準の維持・発展という点では、村研ジャーナルへの投稿を増やす取組みや秋津前会長が提起されている村研ジャーナルへの英語論文掲載などの検討も必要でしょう。この間、多くの会員のご尽力により、研究通信の電子化や事務業務の外部委託が進み、いい意味での効率化が図られてきました。持続可能な学会組織・運営体制の構築のためには、次の段階を検討する時期に入っていることは間違いないと思います。


 また、ポスト・コロナを睨んで、どのような運営体制を目指すかということも今期の重要な課題と考えています。村研の代名詞ともいえる合宿形式の学会大会の開催は、段階的に再会していくことは必要と思いますが、遠隔による学会運営の良さもあることは皆さんも感じていることでしょう。地区研究会などは自分が所属する地区以外の研究会にも参加しやすいですし、理事会や各種委員会もすべてを対面で行う必要はないと思います。特に、北海道に住む私は、過去に 1 月の理事会へ出席した際に、雪害で帰れなくなり足止めをくらったことが何回かあるので、この時期の遠隔での開催は本当にありがたい限りです。また最近の大学教員は超多忙なのでその点でも歓迎される面もあります。もちろん対面でないとなかなか交流が広がらないところがあり、特にこれから人間関係を拡げていかなければいけない若手の研究者にとっては大きなマイナスと思います。そのあたりのバランスを考えて、今後のあり方を検討していく必要を感じています。


 以上のような、学会の組織・運営体制とは別に、研究面においても次々と課題が出されてきています。現在の農村をめぐる状況が厳しさを増していることは、ここで改めて指摘するまでもない事実です。2020年に農林水産省から出された食料・農業・農村基本計画では、地域社会の維持・継承を謳いながらも、本音のところでは人々の暮らしよりも農地を守ることが優先されているように見受けられます。農地が守られても、そこに暮らす人々の生活が成り立たなければ、地域社会を維持・継承していくことはできません。トータルな視点から地域社会を捉えること、そのためには村研の伝統であるモノグラフ研究や学際的研究は大きな力を発揮すると思います。農村に暮らす人々の生活が守られるような研究成果が求められています。


 また、その一方で、第 68 回大会のテーマセッションでは、農業者がいなくなった農村をどうとらえるのか、すなわち「農村とは何か」という根源的な問題が提起されました。地域を“area”というよりも“locality”という視点で捉えようという主張も注目を集めています。このような重要な問いが投げかけられているなかで、“村落”を冠する本学会がどのような解答を用意することができるのでしょうか。今後に託された大きな課題と言えます。このように研究面における課題も様々なレベルで突き付けられているのが現状です。

 村研のすごいところ、そして私が好きなところは、会員が本当に真剣に学会のことを考え、かつ楽しそうに研究会活動や委員会活動に取り組んでいる姿です。若い会員をどんどん理事会や委員会のメンバーに巻き込んで、その熱波も確実に伝導しているように感じます。そういうところを大切にして学会活動や研究活動を続けていくことで、上記のような組織面や研究面の課題を少しずつ解決していくことができるのではないかと思います。

 

 私ができることはそれを見守ることだけのようにも思いますが、多少とも前に進むことができるように努めたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。